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2025年06月30日 [院長コラム]
学校歯科健診に関連するお話―「矯正歯科相談料」について―(最新版)

2022年06月13日に、『学校歯科健康診断における「歯列・咬合」についてのお話』というコラムを掲載させていただきました。それに加え、学校歯科健康診断における「歯科矯正相談料」について情報をアップデートいたします。※本記事は2024年7月25日より公開していた記事を上書き・アップデートしたものとなります。
矯正治療は原則保険外の自費診療となりますが、一部に公的医療保険が適用される場合があります。以下のものになります。となります。
- 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常(代表的なものは口唇裂・口蓋裂)
- 前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)
2024年6月に保険点数の改正が行われ、これにもうひとつ項目が追加されました。
- 学校健診で歯列矯正の受診勧奨を受けた場合の相談・検査に関わる費用
つまり、学校歯科健診で歯列・咬合にチェックが入った紙を持参すれば、相談(一部の場合では検査も)にかかる費用に、保険が適用されるようになりました。「こども医療券」があれば、窓口負担は無いということになります。
私は市内の小学校の学校歯科医を務めさせていただいておりますが、歯科健診の際に「歯列・咬合」の指摘が入った生徒さんおよび保護者のかたには、どういう対応が必要なのかを説明する補足の情報が必要であると常々感じておりました。本コラムではそういった方を対象にご説明申し上げますので、ご興味のある方はご一読いただければ幸いです。
「歯列・咬合」とは、歯の並びやかみ合わせに関する検査項目です。
学校歯科健診後に「歯列・咬合」にチェックが入った紙がきた場合、担当した学校歯科医が、今後慎重に経過の観察を行うことが望ましいと判断したことを表しています。
不正咬合にはいろいろな種類があります。叢生(そうせい、と読みます。凸凹、乱ぐい歯のことです)、下顎前突(いわゆる受け口)、上顎前突(上の歯が出ている)、開咬(前歯がかみ合わない)等が代表的なものです。原因は遺伝や習癖(くせ)など、多岐にわたります。
お子様がこれらのうちどれにあてはまっているか、健診の黄色い用紙には具体的に記載されていないと思いますが、お口の中をみていただくと、ひょっとしたら該当するものがお分かりになるかもしれません。
埼玉県内は基本、高校3年生までは医療費が無料になる「こども医療券」の制度があります。そのため、通常むし歯の治療で歯科医院を受診しても、窓口の支払いが無い、つまり無料で治療を受けることができます。
一方、歯並びを治す矯正治療は、一部の疾患等を除いて原則として保険治療が適用されません(一部の疾患とは、口唇裂・口蓋裂に代表される先天的な病気などのことです)。
健常な方の矯正治療は原則自費診療となり、治療費は通常数万円から数十万円かかります。保険診療と異なり自由に料金設定ができるため、診療所によってかかる治療費には違いがあります。いずれにしても、むし歯の治療などに比べるとかなり高額であるとの印象を持たれるかのではないかと思います。
お子様の健診結果についた「歯列・咬合」のチェックは、直ちに治療を促すもの、いわゆる「治療勧告」ではないということを、とりあえずはご理解下さい。ただし現状を鑑みますと、今後何らかの歯科的な介入が無いと、健全な歯列・咬合の育成に問題が生じる可能性が高いと考えられることは確かです。
令和6年6月より、歯列・咬合にチェックの入った学校歯科健診の用紙を持参した場合、最初の矯正相談について原則保険が適用されることになりました。埼玉県内在住でこども医療券をお持ちの方であれば、窓口での支払いはありません。もし矯正に関して知見のある歯科医師であれば、適切なアドバイスを受けることが出来ると思います。
この制度を利用した場合、相談を担当した歯科医師から相談結果の内容を記した文書が渡されます。文書には現状の不正咬合の状態の説明とともに、以下の4通りのどれかの判断が記載されていると思います。
A)お子様の歯科矯正治療は保険適用になります B)お子様の歯科矯正治療は保険適用になる可能性が高いです C)お子様の歯科矯正治療は保険適用外と考えられます D)お子様の歯科矯正治療は保険適用外で自費となります
AとDは、矯正治療を受ける場合に保険がきくか自費になるかが確定的に診断できています。BとCは詳細な検査を行わないと判断がつかないケースで、この場合の検査は状況により自費になる場合があります。お子さん及び保護者の方は、こういった情報をもとに以後のことをお考えいただくことになるかと思います。
ひとつだけ、私が矯正を行う歯科医師として強調しておきたいのは、「矯正治療に手遅れはない」ということです。前述したように、用紙に入ったチェックは、直ちに治療を開始することを勧めるものではないのです。
ただ、早めに介入すれば比較的簡単に治療できる場合があることも事実ですので、相談された歯科医師の意見を基に、お子様のお口の健康についてお話し合いをしていただければ幸いです。