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2026年05月07日 [院長コラム]
空、はてしない青
昨年6月から今年の2月にかけて、母校の東京科学大学(旧東京医科歯科大学)で研修登録医という立場で研修を受けていました。今さら大学?と思われるかもしれませんが、私にとってはとても大切な追加研修でした。現在進行形の事案なので今は詳細をご説明することは出来ないのですが、区切りが付いたら後日コラムに書こうと思っています。
がらりと話は変わりますが、先日今年の本屋大賞が発表されました。 本好きにとっては結構興味のある賞です。候補作は10作ですが、いつも発表までに半分くらい読んでいることが多いです。越谷で矯正歯科を開院している大学同期の友人はものすごい読書家で、毎年候補作をほぼ全作読了しているのですが、彼と「今年はどの作品がとるか」をああだこうだ話すのも毎年恒例の楽しみになっています。 ただ、今年はふたりの意見がピタリと一致しました。
受賞はほぼ間違いなく朝井リョウさんの「イン・ザ・メガチャーチ」、ただし、気持ちとしては佐藤正午さんの「熟柿」が選ばれると嬉しい!
結果、やはり大賞受賞は朝井さん、そして次点(第2位)が佐藤さんでした。 「イン・ザ・メガチャーチ」はファンダムや推し活を描いていますが、とにかく圧倒的に面白い小説です。まあまあ厚めですが、読み始めたら先が気になって仕方ありません。ネタバレになるので詳細は書けませんが、ラストは私の大好きな日本ミステリの金字塔、宮部みゆきさんの「火車」を彷彿とさせ、しびれました。 話題作を次々に発表する朝井さんは本当にすごい作家さんだと思います。
ただ、昨年読んだ本の中でのマイベストは「熟柿」です。佐藤さんは昔から大好きなのですが、寡作といいますか、どんどん新作が出てくるタイプの作家ではないため、発刊の情報が出ると嬉しくなります。個人的な感想ですが、「熟柿」は佐藤さんの最高傑作だと思います。 老婆を轢き逃げした妊娠中の女性がたどる人生を描く小説ですが、これも一度読み始めるとなかなか本を置くことができません。私は夜の9時頃に読み出し、結局徹夜本になってしまいました。 物語の良さは言わずもがななのですが、文章が本当に素晴らしいです。格調高いのにあり得ないくらい読みやすい一人称……言葉にするのは難しいですが、これはぜひ実際にお読みになって体験していただきたいと思います。そして最終章の描写は眼前に場面が立ち上がってくるほどの圧巻の描写。ぜひ映像化してほしいと心から思っています。
で、本屋大賞のおすすめ小説は分かったけど、このコラムのタイトルって何なのよと思っている方、いらっしゃいますよね。実はこれも本のタイトル。今年の本屋大賞「翻訳小説部門」第1位の作品です。本屋大賞って、こういう部門もあるのですよね。 「空、はてしない青」メリッサ・ダ・コスタさんという方が書かれたフランスの小説です。 若年性アルツハイマーと診断され余命宣告された26歳の青年が、人生最後の旅に出るにあたりネットの掲示板で同行者を募集します。そこに応募してきたのは小柄な若い女性で……
難病ありの恋愛もの?記憶が消える?どうも手垢が付きすぎた題材のように思いましたがさにあらず。この小説、こういった話ならこういう風に展開するのだろうな、という定石みたいなものを微妙に外し続けてくるのです。いくらでもベタベタのお涙頂戴物語にできそうなのに、あえて泣かせることを避けようとしている印象です。でも、だからこそ「あれ、これどうなっちゃうの?」みたいな感じでどんどん読み進んでしまいます。会ったことも無い難病の男からの一緒にキャンピングカーで旅に出ようという誘い、まともな人なら、しかも女性なら絶対応募しないと思いますが、これにも読者を十分に納得させる理由が用意されています。 そして、先ほど「泣かせることを避けようとしている」と書きましたが、泣けます。クライマックスも結構描写は抑制が利いているのですが、それでも最後の方は涙が止まりませんでした。 以前のコラムで本好きになったきっかけとして「アルジャーノンに花束を」を紹介しましたが、本作はあの名作に重なるものも感じました。私にとって大切な小説になりましたので、皆様に機会があれば手に取っていただきたいという気持ちを込めて、コラムのタイトルといたしました。 実はこの小説、上下巻で計900ページほどあります。でも、上巻で挫折することはまず無いと思います。翻訳も翻訳物特有の読みにくさを全く感じさせない、自然で素晴らしいものです。購入時には躊躇なく下巻と同時購入して大丈夫かと…… 多分。

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