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2022年06月13日 [院長コラム]

学校歯科健康診断における「歯列・咬合」についてのお話

※2024年7月に、本件のお話がアップグレードされました。
学校歯科健康診断における「歯科矯正相談料」の保険導入についてのお話』をご覧ください。

6月に入り、狭山市内のほとんどの小・中学校は歯科健康診断(以下、健診と略します)を終えました。一昨年・昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で健診が秋にずれ込んだり、密を避けるため健診の実施形態そのものを大きく変更したりとかなりの混乱がありましたが、今年はほぼ平常に近い形で行われたところがほとんどのようです。

健診で何らかの問題点が確認された場合、後日保護者宛に結果を通知する紙が出されます。代表的なものは言うまでもなく「むし歯」で、これは早めに歯科を受診してくださいねという治療勧告的なものになります。これは分かりやすいですよね。
一方、むし歯以外のチェック項目の中でやや分かりにくく、どう対応すればいいの?という印象を持たれてきたのが「歯列・咬合」と「顎関節」です。この2項目に関して、審査基準の見直しを促す通達が先だって日本学校歯科医会よりありました。
詳細はここに記載しませんが、重要な点のひとつは
「この2項目に関しては、ただ保護者に問題ありの告知をするのではなく、それが何を意味し、どういった対応を考えるべきなのか、ちゃんと知らせていきましょう」
ということを学校歯科医に求めるものです。
私は狭山市立入間川小学校の学校歯科医を務めていますが、養護の先生と相談し、健診前に取り急ぎ以下のような文書を作成いたしました。(「顎関節」に関しましては話がやや複雑になるので、今回の文書では触れていません。今後検討を行う予定です。)
この文書がそのまま採用され実際に保護者に配布されるのか現時点では未定ですが、ちょうど健診シーズンということもありますので、参考までに本HPに掲載させていただきます。ご興味のある方は、お読みいただければ幸いです。

学校歯科健診で「歯列・咬合」に
チェックが入った生徒さんの保護者の方へ

今回行われました学校歯科健診にて、お子様の「歯列・咬合」につきまして、今後慎重に経過の観察を行うことが望ましいと判断させていただきました。

「歯列・咬合」とは、歯の並びやかみ合わせに関する検査項目です。
不正咬合にはいろいろな種類があります。叢生(そうせい、と読みます。凸凹、乱ぐい歯のことです)、下顎前突(いわゆる受け口)、上顎前突(上の歯が出ている)、開咬(前歯がかみ合わない)等が代表的なものです。原因は遺伝や習癖(くせ)など、多岐にわたります。
お子様がこれらのうちどれにあてはまっているか、黄色い用紙には具体的に記載されていないと思いますが、お口の中をみていただくと、ひょっとしたら該当するものがお分かりになるかもしれません。
狭山市は基本、中学3年生までは医療費が無料になる「こども医療券」の制度があります。そのため、通常むし歯の治療で歯科医院を受診しても、窓口の支払いが無い、つまり無料で治療を受けることができます。
一方、歯並びを治す矯正治療は、一部の疾患を除いて原則として保険治療が適用されません。(一部の疾患とは口唇裂・口蓋裂に代表される先天的な病気のことです。)
健常な方の矯正治療は自費診療となり、治療費は通常数万円から数十万円かかります。保険診療と異なり自由に料金設定ができるため、診療所によってかかる治療費には違いがあります。いずれにしても、むし歯の治療などに比べるとかなり高額であるとの印象を持たれるかのではないかと思います。
お子様の健診結果についた「歯列・咬合」のチェックは、直ちに治療を促すもの、いわゆる「治療勧告」ではないということを、とりあえずはご理解下さい。ただし現状を鑑みますと、今後何らかの歯科的な介入が無いと、健全な歯列・咬合の育成に問題が生じる可能性が高いと考えられることは確かです。
そのため、お時間のあるときに、近隣の歯科・矯正歯科でご相談されることをお勧めいたします。もし矯正に関して知見のある歯科医師であれば、適切なアドバイスを受けることが出来ると思います。一カ所だけだとご不安があるようでしたら、別の歯科を受診してセカンドオピニオンをきいてみるのも良いかもしれません。
ひとつだけ、私が矯正専門の歯科医師として強調しておきたいのは、「矯正治療に手遅れはない」ということです。前述したように、今回のチェックは、決して直ちに治療を開始することを勧めるものではないのです。
ただ、早めに介入すれば比較的簡単に治療できる場合があることも事実ですので、医師の意見を基に、お子様のお口の健康についてお話し合いをしていただければ幸いです。