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2024年07月25日 [院長コラム]

学校歯科健康診断における「歯科矯正相談料」の保険導入についてのお話


2年程前に、『学校歯科健康診断における「歯列・咬合」についてのお話』というコラムを掲載させていただきました。そちらの内容がアップデートされましたので、お知らせいたします。

矯正治療は原則として保険が適用されない自費診療となりますが、症状によって保険適用とされる場合があります。それは、以下となります。

  • 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常(代表的なものは口唇裂・口蓋裂)
  • 前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)
  • 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)

これまでは上記のような症状がある場合にのみ矯正治療は保険適用となっていましたが、2024年6月に保険の改正が行われ、以下のような状況でも保険が適用されることになりました。

  • 学校健診で歯列矯正の受診勧奨を受けた場合の相談・検査に関わる費用

つまり、学校歯科健診で歯列・咬合にチェックが入った紙を持参すれば、相談(一部の場合では検査も)にかかる費用に、保険が適用されるようになりました。「こども医療券」があれば、窓口負担は無いということになります。

私は市内、入間川小学校の学校歯科医を務めさせていただいておりますが、歯科健診の際に「歯列・咬合」にチェックが入った紙が出る生徒さんには、その内容を補足する説明の用紙を、養護の先生のご助力をいただき保護者の方に配布しておりました。その内容はそのまま以前のコラムに載せておりましたが、そちらの内容も更新をしましたのでここに掲載します(今年は健診の時期と保険改正の時期が重なってしまったため配布を見合わせましたが、来年度より配布を再開する予定です)。ご一読いただければ幸いです。

学校歯科健診で「歯列・咬合」に
チェックが入った生徒さんの保護者の方へ

今回行われました学校歯科健診にて、お子様の「歯列・咬合」につきまして、今後慎重に経過の観察を行うことが望ましいと判断させていただきました。

「歯列・咬合」とは、歯の並びやかみ合わせに関する検査項目です。不正咬合にはいろいろな種類があります。叢生(そうせい、と読みます。凸凹、乱ぐい歯のことです)、下顎前突(いわゆる受け口)、上顎前突(上の歯が出ている)、開咬(前歯がかみ合わない)等が代表的なものです。原因は遺伝や習癖(くせ)など、多岐にわたります。
お子様がこれらのうちどれにあてはまっているか、黄色い用紙には具体的に記載されていないと思いますが、お口の中をみていただくと、ひょっとしたら該当するものがお分かりになるかもしれません。
狭山市は基本、高校3年生までは医療費が無料になる「こども医療券」の制度があります。そのため、通常むし歯の治療で歯科医院を受診しても、窓口の支払いが無い、つまり無料で治療を受けることができます。

一方、歯並びを治す矯正治療は、一部の疾患等を除いて原則として保険治療が適用されません(一部の疾患とは、口唇裂・口蓋裂に代表される先天的な病気などのことです)。
健常な方の矯正治療は原則自費診療となり、治療費は通常数万円から数十万円かかります。保険診療と異なり自由に料金設定ができるため、診療所によってかかる治療費には違いがあります。いずれにしても、むし歯の治療などに比べるとかなり高額であるとの印象を持たれるかのではないかと思います。
お子様の健診結果についた「歯列・咬合」のチェックは、直ちに治療を促すもの、いわゆる「治療勧告」ではないということを、とりあえずはご理解下さい。ただし現状を鑑みますと、今後何らかの歯科的な介入が無いと、健全な歯列・咬合の育成に問題が生じる可能性が高いと考えられることは確かです。
そのため、お時間のあるときに、近隣の歯科・矯正歯科でご相談されることをお勧めいたします。令和6年6月より、歯列・咬合にチェックの入った学校歯科健診の用紙を持参した場合、矯正相談には原則保険が適用されることになりました。埼玉県内のかたであれば、こども医療券があれば窓口での支払いはありません。もし矯正に関して知見のある歯科医師であれば、適切なアドバイスを受けることが出来ると思います。

ひとつだけ、私が矯正専門の歯科医師として強調しておきたいのは、「矯正治療に手遅れはない」ということです。前述したように、今回のチェックは、決して直ちに治療を開始することを勧めるものではないのです。
ただ、早めに介入すれば比較的簡単に治療できる場合があることも事実ですので、医師の意見を基に、お子様のお口の健康についてお話し合いをしていただければ幸いです。