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2015年08月03日 [院長コラム]

「今すぐ始めない」のが良い場合もあります。

よく初診・相談の際に患者様からいただくご質問のひとつに、「今すぐ始めた方が良いのでしょうか?」というものがあります。

矯正治療は基本的に手遅れになることはないので、何歳からでも、どのような状態からでも状況の改善が見込まれると思いますが、早めに始めた方がより楽に、より良い状態に治療できる症例があることは確かです。この場合の早めというのは、かなりざっくりした言い方をしてしまうと、「まだ乳歯が口の中にある時期」ということになります。

早めの開始をお勧めしたい不正としては、大まかに言えば以下の4つが挙げられます。

●そのまま放置しておくと以後の成長発育や歯の生え替わりに悪い影響を与え、将来的な治療が難しくなってしまうもの
●早期に介入することによって、将来抜歯をせずに排列できるなどのメリットが期待できるもの
●今治療しておけば、将来本格的な矯正治療をしないで済むかもしれないもの
●直ちに始める合理的な意味合いはあまりないが、本人が現状に強いコンプレックスを感じており、少しでも見た目を改善してあげておいたほうがよいと思われるもの

具体的には反対咬合や重度の上顎前突、一部の歯が干渉してかみ合わせがずれている場合などです。こういった場合は、当院では早めの治療をお勧めした上で開始時期をご検討いただいております。
そして逆にいうと、以上の項目に当てはまらない場合、早めに治療を開始するメリットはあまりないということになります。
その場合は機が熟すのを待ってから開始した方が、治療期間を短くすることができます。例えば小学3年で始めても小学6年で始めても、終わるのが同じ中学2年生頃でしかも治り方にあまり差が無いのなら、これは小6から始めた方が良いに決まっていますよね。そういった意味から、当院では検査・診断後のご説明の際に、「いまは何もしませんので当面経過観察をさせてください」とお話することがあります。これは上述のように早期に始めるメリットが何も無い場合で、なるべく治療の無駄を省き装置の装着を短期間で済ませるための前向きな判断です。
「他のお子さんはやっているのに、うちの子だけ始めないで大丈夫かしら」と思われる親御さんもおられるかもしれませんが、大丈夫です。その進め方がお子様にとっての最良の治療法であるという診断としてご理解いただければ幸いです。

最後に、年齢や口腔内の状態を問わず、来院された患者様には必ず何らかの装置を入れるという方針のクリニックも少なからずあることは事実です。それは医院経営的には正しいことですが、矯正治療学的に正しいかどうかは疑問だと思います。