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2013年11月18日 [院長コラム]

医院と「ホームページ」

メニュー・食材の偽装問題が世間を騒がせています。「芝エビ」が実際は「バナメイエビ」だったり、「和牛」が加工肉だったり、まあ次から次へとよくも出てくるものです。いろいろな言い訳(?)が為されているようですが、つまるところ利益率を上げたかったのが理由だということに疑いの余地はありません。あえて食材を特定しなければ、つまりただ「エビ」としておけば何の問題もなかったでしょうに、あえて高級感を出すために食材の名称を偽ったわけですから、これは詐欺といわれても仕方ないと思います。

と、いつになくシリアスな調子で批判的に書き出しましたが、この「偽装」問題、実は対岸の火事ではありません。医科・歯科の業界にも同様な土壌が存在するように思われます。偽装が疑われるその主たる舞台は、いままさにお読みいただいております、そう、医院の「ホームページ」です。

現在、ホームページ(以下 HP)を持つ医療機関はかなりの割合に登ります。ほとんどのHPでは医院の場所や診療案内(診療時間や休診日)といったベーシックな情報から、スタッフ紹介、診療内容の説明などかなり詳細な情報が掲載されています。患者様は受診前に医院の概要を知ることができるので、HPは医院選択のための重要なツールになります。すなわち、(今更言うまでもないことですが)HPはその医院にとっての「広告」でもあるのです。

ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、医療機関の広告、例えば電話帳や駅看板などにはいろいろと厳しい規制があります。表示してよいことといけないことが決まっており、例えば専門医資格等についていえば、現状では矯正の専門医資格は表示不可です。ところが、HPは一部例外はあるものの原則「医療広告ガイドライン」の規制対象外とされており、ぶっちゃけていえば何を書いても自由。そのため過大な表現内容が問題視されてきているのです。

ここで、「ホームページに掲載すべきでない事項」とされている項目について、ざっと挙げてみましょう。
(1)内容が虚偽にわたる、または客観的事実であることを証明することができないもの
  例:「○%の満足度」「絶対安全な手術を提供しています」
(2)他との比較により自らの優位性を示そうとするもの
  例:「○○の治療では、日本有数の実績を有する病院です」
(3)内容が誇大なもの又は医療機関にとって都合が良い情報等の過度な強調
  例:「○○学会認定医」(活動実態の無い団体による認定)「○○センター併設」
(4)早急な受診を過度にあおる表現又は費用の過度な強調
  例:「ただいまキャンペーンを実施中」
(5)科学的な根拠が乏しい情報に基づき、国民・患者の不安を過度にあおるなどして、医療機関への受診や特定の手術・処置等の実施を不当に誘導するもの
  例:「○○の症状がある二人に一人が○○のリスクがあります」

ええっと、まだ幾つかあるのですが、長くなるのでこのへんで・・・。
いかがでしょうか。こういう内容が記載されたHP、ご覧になったことがある方も多いのではないかと思います。そこでは、事実とは異なるある種の「偽装」が存在している可能性が否定できないのです。

今後ますますネットは生活に浸透し、各医院にとってHPは欠くことのできない情報発信のツールになるでしょう。しかし、野放図に誇大な内容が溢れかえれば、それを利用する患者様は疑心暗鬼になるばかりのように思えます。
まさにこれはモラルの問題です。極めて専門性の高い我々の仕事は、やはり極めて高いモラル意識を持つべき仕事でもあります。当院のHPは細心の注意を払い制作しているつもりではありますが、中には不適切な内容が含まれているかもしれません。もしお気づきの点がございましたら、ご指摘をいただければ幸いです。今後も、適切な内容・情報を発信していくよう努力していきたいと思います。

今回は随分堅い内容になってしまいました。最後まで辛抱してお読みいただいた方、ありがとうございました。

※上記(3)について補足いたします。(2017年7月15日 更新)
矯正歯科のHPの「院長略歴」のところに、以下のような記載を見かけることがあるかと思います。
・インビザライン認定医・インコグニト認定医・ハーモニー認定医・クリアアライナー認定医 等々
何やら立派な肩書のようですが、これらはその治療システムをレクチャーする有料のセミナー(通常1日~2日)に参加すれば、無条件で獲得できる資格です。もちろん試験などありませんし、経験した症例数などを問われることもありません。こういったセミナーに積極的に参加して情報収集に努め、常に知見をアップデートしていくことは臨床医として極めて重要なことでありますが、これらの資格を持っているというだけでは、その矯正医が何か特別に優れているという評価には全くなりません。ただ、患者様にはそういった事情は分かりませんから、これも一種のミスリードといえると思います。