院長のコラム
 
 第11回 プロの矜持(2013年01月24日 掲載) 

 お正月の読売新聞一面のコラム「Nippon 蘇れ」を読んで、新年早々ガツンとやられました。で、それに関してここで書こうと思ったのですが、風邪で体調が優れずそのままぐだぐたと先送りにし、、気がつけば1月も終わり近くになってしまいました。ようやく身体の方も調子が戻ってきましたので、新年一回目のコラムを書かせていただくことにします。
 そのコラムはプロを軽視する傾向のある現代社会に警鐘を鳴らす内容のものでしたが、以下その一部を本文のまま記載させていただきます。
 

 「民意(世論)」「消費者(お客様)」の意向が最優先される中で、プロの矜持はゆらいでいる。
 例えば医療。医師が、治療の選択肢を矢継ぎ早に患者に示して、判断を患者自身に丸投げするケースが目立ってきている。
 医師のプロフェッショナリズムの在り方を研究している東京医療センターの尾藤誠司・臨床研修科医長らは、こうした「患者丸投げ」の事例を「患者の権利を尊重しているように見せて、その実、医師の免責にすり替わっている」と、プロの責任放棄を深刻視する。 

 
 これは耳が痛いですね。
 随分前のことになりますが、治療に対して非協力的な患者さん(今風にいえば、コンプライアンスに問題のある患者さん、ということになるのでしょうか)のお母様にその旨を伝え、こちらの指示の通り装置を使わせるようにして欲しいとお願いしたことがありました。その際にお母様から言われた言葉を、今でもはっきりと覚えています。
「先生に勧められたから治療始めたんですよ。こんなことなら始めなければよかった。」
 まあ、ショックでした。自分としてはことさらに矯正を勧めたつもりはなかったのですが、プロとして矯正治療が必要と判断したことが、患者様を治療に引っ張り込むような物言いになっていたのかも知れません。それ以来、というわけでもないのですが、とにかく患者様の自主性、患者様の意思を重んじるということによりいっそう留意して仕事をするようになりました。これは現代医療の基本的なコンセプトともいえる「POS(患者中心の医療システム)」に合致する考え方であり、それ自体間違っているとは思わないのですが、それでもこの読売のコラムを読んで、やはり指摘されている状況に思い当たるような部分があることは否めないかなあと・・・。
 矯正は原則保険がききませんし、むし歯などと違いそもそも「治療するかしないか」という選択肢が出てくる。治療に入るにしても、「抜歯をしないと直らない」と言われた一方で他の先生は「必ず抜かないで直します」とホームページに掲げている。どっちがほんと?といくつもの分かれ道が出てくる。プロとしてその都度適切なアドバイスをして差し上げなければいけないのですが、確かに一歩腰が引けた状態で患者様に接していたところがあったかもしれません。
 自分の考えや判断を押しつけるのは当然問題ですし、落としどころが難しくはありますが、なんとか矯正治療のプロとして皆様のお役に立てるよう、今後も研鑽をつんでいきたいと思います。

ITO ORTHODONTIC CLINIC